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『お登勢』旅日記26

矢之輔旅日記26

これがほんとの最終回

  とうとうほんとの最終回になりやした。今では『人情一夕噺−子はかすがい』の稽古の真っ最中で、江戸っ子大工にならなくちゃあならねえ、ってんで、おおわらわのどたばた状態。それでも忙中閑あり、この回を持ちまして、あっしの旅日記、お開きとさせていただきやす。
  ぜしとも紹介してえのが、舞台監督の中橋耕史、『お登勢』で舞台監督をやり、こんだの芝居でも勤める、超多忙な男なんで、皆様にご挨拶を、と言いやしたが、それどころじゃあねえほどの忙しさ、勘弁してやっておくんなさい。
  代わりにあっしから紹介しますと、今、特に歌舞伎作品に入れ込んでる、わが座の有望株、これからも大いに活躍して貰いてえ一人でさあ。どうか皆様、応援してやっておくんなさい。

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インカムってえので、他のスタッフと打ち合わせ中の、中橋。黒衣姿がいいねえ、粋だよ。

  役者・裏方打ち揃って、いい芝居を創り、皆様にご覧頂く、あっしらの仕事、これからも末永く、よろしくお願え申しやす。
  では皆様、またこの「公演だより」でお目に触れますのを、お楽しみになすってくださいやし。ごめんなっすって、おくんなさい。
【「人情一夕噺−子はかすがい」の、大工辰五郎こと 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記25

矢之輔旅日記25

ほんとに最終回? 

  伊豆の下田で、無事に千穐楽を迎えやした。初演から数えてちょうど100回目のステージ、唐人お吉記念館の隣りにある会場で、「泣いて昔が帰るなら、なんで愚痴など言うものか」とばかりに、「あの人もトチった、この人もトチった、今度はあたしの番なんだ」と、いろいろトチりもありやしたが、すべて忘れて、最後の舞台を勤めやした。そうなりゃあもちろん、夜は「お酒だよ。お酒をおくれ」ってなもんで、打ち上げの美酒に酔い痴れやした。肴は捕れたての金目鯛の刺身。翌朝、踊り子号に乗って帰京しやした。
 さあ、てえへんだ。早速頭ん中のフロッピーとっけえて、「人情一夕噺ー子はかすがい」のモードに切替えなくっちゃならねえ。
 そんなんで、あっしの旅日記も、多分これが最後にはなると思いやす。多分。
 ところでこんだの静岡県下の巡演中、制作として主催者の皆さんとのパイプ役を勤めたのが、森田賢。サクはねえから、森田健作先生たあ違うけど、こっちだって鹿児島ラサール・東大卒の逸材でぇ、べらぼうめ。
 おぅ、森田の賢さん、お世話んなった静岡県下の皆さんにご挨拶しねえな。

「静岡県演鑑連の皆様 
 15会場26ステージ28日間に及ぶ『お登勢』巡演も無事終了いたしました。これもひとえに静岡の皆様のお力添えによるものと、心より御礼申し上げます。とりわけ今回運営サークルとして参加された会員の皆様には言葉では言い尽くせぬほどお世話になりました。大量の道具を運んでいただいた搬出入をはじめ、大変なお仕事だったかと思います。月並みな言葉ではありますが、本当にありがとうございました。
 お芝居におきましても、皆様の暖かい拍手、暖かい笑い声がどれだけ私達を勇気付けて下さったことか。演劇は観る人たちとの共同作業による芸術であることを改めて実感させていただきました。かさねがさねではございますが、ただただ、『ありがとうございました!』
 それでは静岡県演鑑連の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
そして・・・おしまいに個人的なメッセージをお許し下さい。至らないところの多い制作ですみませんでした!自分も精一杯精進を重ね、成長した姿となってまた皆様とお会いしたいと存じます。急にグワーンとの成長は無理かもしれません。一つ一つ課題をクリアして“静おか〜”に成長していこうと思います。これからも末永くよろしくお願いします。   劇団前進座制作 森田 賢」

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浜松北のロビーで、中央、金原事務局長さんらと打ち合わせ。その左が森田。

 これからも巡演先に伺って、各地で皆さんにお世話んなると思いやすが、なにとぞよろしくお願えいたしやす。ではみなさん、10月の前進座劇場、11月の浅草公会堂へ、是非お出かけくだせえ、お待ち申しておりやす。
【てやんでぇ、こちとら江戸っ子でぇ、と一人息巻く 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記24

矢之輔旅日記24

いよいよ最終回? 

  富士から修善寺・富士宮・静岡・三島・藤枝・清水・磐田・浜松北・島田・菊川・浜松・沼津と巡演、伊東・下田で終了。静岡県下の皆様、ほんまにお世話になりました。おおきに、ありがとうございました。
  この日記もそろそろ最終回。長いことお付き合いくれはって、御礼申上げます。まだ紹介したいのんが二人、一人は舞台監督助手の岡本尚之君、入ってまだ二年にもなりまへんので、毎日が勉強やと思います。周りのスタッフさん、皆さんに支えられて、日々成長し続ける、岡本君のご挨拶。
  「前回(三月)の旅と違い、今回は大道具付きとして旅に参加しました。仕込みの手順からバラシの手順まで無駄がないよう、色々と考えながら次々作業を終わらせていくので、その方法を近くで見ていて勉強になりました。次の公演では、『お登勢』で培ったものをやっていきたいです。今回の公演はとても勉強になった公演になりました。」

  もう一人は音響の川名あき君。たった一人で音響の卓に向かい、大勢がかもし出す音楽を、あるいは効果音を、実に繊細な調整をしながら流しだす、とっても微妙な仕事をこなしてます。それだけやのうて、各会場ごとに違う台詞の通り方、これなんかも気にしてくれて、わてらにアドバイスしてくれる。逆に、会員さんとの交流会があると「皆さんの反応はどうでした?」と、聞いてきます。常に舞台を正面、つまりお客はんと同じ条件で見ながら仕事する、彼女ならではの芝居との向き合い方、わては大いに頼りにしてまっせ。


  多くの支えがあっての芝居、前進座の「売り」は、役者と裏方のアンサンブル、これやな。あっと、忘れたらあかんのが、お客はんとのアンサンブル、これが一番やな。
  これからも、前進座をどうぞご贔屓に、よろしゅうお頼、申します。
【A型、みずがめ座の 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記23

矢之輔旅日記23

いよいよ大詰

  巡演がそろそろ終わり、千穐楽の翌日から次の芝居に取り掛かります。どの芝居も、順調に公演していくには、幕内のまとまりが不可欠、束ねてまんのが総務室長。今回のその大役を勤めはった、松涛喜八郎はん、芝居では、稲垣小次郎言うて、白足袋派の超過激派、犬の死骸を婚礼の祝いに持ってくる侍のリーダー格で出てはった、あの人からのご挨拶。
 「市民劇場だったり演劇鑑賞会だったり労演だったり、名前はいろいろですが、二月に一回くらい芝居を観続ける方たちの会員制の組織が全国にあります。

 『お登勢』は春に四国の会に、この秋は静岡の会にお迎えいただきました。

 実は僕も学生時代にこの会で芝居に出会ったのでした。 
 入学間もなく大学の正門でチラシを配っていた学部の先輩にツカマリマシタ。ドラマなどで御馴染みの役者さんが出演する劇団民藝イタリア喜劇『おお!わが町』に興味があったので五月には入ろうと思っていました(合格発表を観に行けば、同劇団の『灰の街のアメリカ紳士』を観ることも出来たのでした)。

 「これもいい芝居だから、これから観たら」という先輩の言葉に従って青年劇場の『夜の笑い』、六月の文化座『サンダカン八番娼舘』、馴染みの役者はいなくてもこんなに芝居は面白いものか。

 次の九月が『奇跡の人』と『さんしょう太夫』との選択例会。広島市民劇場イチオシの東京演劇アンサンブルと前進座。
 大河ドラマ『花神』の主人公を演じた中村梅之助は知っていても、前進座は初めて。知っている役者は一人もいない。

 5、600年前の説教節の語りを元に、能狂言など多彩な伝統芸能の技術を駆使した舞台。退屈なイメージの伝統芸術、絶対に寝るだろうと思った舞台は人生を変えてしまった。


 この会で次の年に観る芝居を決めるのは今年の会員。入った時に観るのは去年の会員さんが選んだ作品たち。勿論その人たちの多くは今年も一緒に見ているのですが。

 鑑賞団体に入らずに、自分が選んだ芝居だけを観ていたら、この出会いはなく平穏無事な人生を歩んでいたのかもしれません。
 でも、鑑賞団体には、その都度切符を買って観に行ってちゃ得られない“例会運営”という特権があるのです。

 例えば搬入搬出―トラックから舞台で使うものを運び入れ、また運び出す。何だこれは?と思いつつ運んだものが舞台にたっていた時の感動は“お客様”でない”会員さん“にしかありません。

 車に縁のない僕は、駐車場係はちょっと苦手でしたが、売店、モギリ、託児所、新鮮に経験しました。
 見本パンフレットの自分の写真頁を広げて展示していく劇団のパンフレット係、『僕が主役ですもん』と言って憚らない山崎竜之介先輩も当時目撃しました。

 私達はロビーで下手な台詞や踊りを稽古している恥ずかしい姿も、例会運営の方たちには披露していることになります。でもその中から明日の主役が出てくるかも?知れません、もしかしたら…。
 役者は板を舞台を踏んでいなければタダの人です。イタを踏んで初めて役者は育ちます。
 全国の鑑賞会の方たちのお蔭で舞台の役者は成長出来るのです。

 例会運営が楽しくなる芝居を持ってまた伺いたいと願っています。」

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松涛はんの、稲垣。一癖も二癖も、癖が大有りな、立ち姿でんなあ。

  彼らの仕事のお蔭で、幕内も、主催者の皆様とも、スムーズにことが運んで芝居が出来る。ありがたいこっちゃ、ほんまに。彼が観てしまった「さんしょう太夫」、来年から全国を巡演します。皆様どうぞよろしくお願いいたします。
10月4日記
【旅の幸せを噛み締めている 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記22

矢之輔旅日記22

感謝、感激、飴、あられ

  「お登勢」の巡演も、残りわずか、静岡県下の会員の皆様には、本当にお世話になりっぱなしで、何とお礼申上げたらええか、とにかく、感謝してま。
  鑑賞団体の皆様には、芝居をする環境に気い使うて頂いて、いろいろとお世話いただいてまっけど、差し入れやら、お通しやら、芝居の仕事してて良かったなあ、と思うことがありまんねん。感激ですわ、ほんま。もちろん、のどの心配して飴を差し入れして貰うたり、あられ、つまりお煎餅貰うたり、時にはおにぎりやらご自慢のお料理やらをお通しというて、盛り沢山に頂いたり、ありがとうございました。
  その方面の係りやってる、もしもし亀よの亀ちゃん、芝居では、わての娘・志津と見合いして結局振られてしまう、多村慎吾と、お登勢人形の左遣いやってる、亀井栄克、よしかつ、って読みまんねやけど、彼からちょっとお礼のご挨拶。
  「全国を巡業しておりますと、お通し又は小夜食といって主催者の皆様の手作りのお食事やら楽屋見舞いを頂く事があります。いつもありがとうございます!私は生活係といってケータリングの係をする事が多いので、いつも助かっております。また搬入搬出時にスタッフさんと間違われる事が、度々あるのですが、去年『三人吉三巴白浪』を(豊橋で)公演した時のこと。搬出時にいつものようにお茶セットの片付けなどしておりましたら、手伝って下さっていた女性に声を掛けられました。『おたくはスタッフのかた?それとも役者さんの卵?』 せめて雛にはなりたいと修行中でございます。」

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まだ卵の亀ちゃんが、卵などを頂いて。
静岡で、カボチャのスープよそってま。

  卵か雛かは知りまへんけど、秋の「人情一夕噺」では女形で鰻屋の女中、正月京都の南座では、「三人吉三巴白浪」で手代の十三郎を勤める亀井栄克を、よろしゅうお頼申します。
10月3日記
【頂いたお通しで太ったかな、と、ちょっと心配な 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記21

矢之輔旅日記21

浜松三店

  旅をしてると、その土地土地にお馴染みのお店が出来ます。もう30数年やってまんので、それなりに多くのお馴染みがでけましたけど、ここ浜松にも、必ずお寄りするお店が三つ。
  先ずは「稲作」はん。先代の大将からずっとのご縁で、うちの先輩達もようけお世話になってます。店にはうちの浜松公演の折の色紙がずらり、今でも何人か必ずお寄りしてます。先ずは煮込みのおでんから。一度店を移転しはって、その折、これ使うて、とくれはったのが、「稲作」と書かれた徳利にお猪口。今でも稽古のときに使わせてもろおてます。それを使うて稽古すると、店を思い出し、本物のお酒が入ってるように錯覚するから不思議や。
  もう一軒は「柳川亭」。今度の「人情一夕噺」の改訂をしてくれはった、小池章太郎はんのご実家。今は弟の裕二郎はんが継いではって、うなぎと泥鰌が美味い。ご主人ここんとこ、笛のお仕事が忙しく、今度伺った時も、沼津の御用邸で笛の演奏会があるとかで、お留守やった。芸の道に長けてはるのは、ご兄弟とも一緒、ご先代の血筋でっしゃろな。
  三軒目は「とし平」。亡くならはった芳三郎先輩とよく伺ったのが始まりで、三味線ライブの「伝の会」や「落語会」を、店で開催するのもここの特徴。大将が仲介で、小学校の子達に邦楽を聞かせてはるそうな、ええこっちゃ。料理は北海道産のものを中心にしてはります。


  他の土地も、なじみのお店は仰山おます。一年の内、半年以上は東京におらへんわてらの楽しみ。さ、次は沼津、「満月」やな。
【食い意地だけは人に負けへん 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記20

矢之輔旅日記20
荷物、お荷物、貴重品

  わてらの使うもん、手持ちで、ホテルでも使うもんは別として、あとはすべて、11トンのトラックに積み込みます。全部積めなっかたらトラック追加、つまりトラック代と運転手さんと、倍かかります。積み込めへなんだら、偉いこってすわ。そやからわてらも若手の頃、茶筒をトントンとやったら中味がぐっと減るように、隙間をなくして積み込むのに、えらい苦労したもんですわ。
  又、雨が降ったら、わてらやのうて、荷物を運ぶお手伝いしてくれはる会員さんが、濡れて苦労するのんは申し訳ない。そやから、気イ使うてまんのや。
  そのトラックの積み込みは、スタッフさんと、一応40才台までの役者が担当します。その責任者が、運責。演出部から一人と、役者から一人出て、主に箱型の物は役者の担当。今回は、白足袋派の片岡清吾・人形遣いをやっている、鈴木大が運責で、トラックの上で荷物を積み上げてます。
  

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いかにも、やってます、ちゅう写真の鈴木大

  でも人間、何か一つは取り柄があるもんで、大が運責をすると、不思議に雨にあわへん。結構旨いこと雨を避けて、荷物を降ろしたり積んだりしてます。これだけは感心するわ、ほんまに。  
  「運責の鈴木大です。搬入・搬出を手伝って下さいました静岡県の会員の皆様、本当にありがとうございました。我々だけでは、どんだけ頑張ってもたくさんの時間がかかってしまいます。僕はトラックの上で荷物を積んでいるのですが、お手伝いの会員さんが二人一組で荷物を運んで下さる姿には、もう感謝でいっぱいです。これからも、会員の皆様が安全な環境を確実につくり、怪我をされないよう細心の注意をはらって頑張っていきます。何卒よろしくお願いします。」

  お前は先ず役者やろ、って言いたくなるような文章でっけど、そこをぐっと抑えて、「運責の大」のご挨拶。
  確かにどこの鑑賞団体さんも、会員の皆様が荷出し・荷降ろしを手伝ってくれはるんで、ほんまに助かってますけど、お怪我なされまへんように、重たい物を無理してお持ちになりまへんように、くれぐれもお願いいたします。

  こんなして荷物運んでまっけど、秋の公演「人情一夕噺」では、茶屋の娘、つまり女形で出まんねん、大が。その変身振りを、是非見とおくんなはれ。
【大の母親とは幼なじみの 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記19

矢之輔旅日記19

時今也帰京旗揚

  字がちょっと違いまっ。本題は歌舞伎「時今也桔梗旗揚」、明智光秀の謀反を描いた時代物で、わての大好きな芝居の一つ。
 それより秋の公演「人情一夕噺−子はかすがい」まであと半月。時は今、帰京してこの芝居の旗揚せな、と焦っても栓方なし。自分達なりに、準備は着々と進んでるつもりで、その筈だす。
 先日、林家正雀師匠にご足労頂いて、あっしと女房の菊之丞、家主の辰三郎とで、秋の公演のパンフレット用の対談をしました。落語「子はかすがい」のこと、今度の脚本に師匠が感動してくれたこと、これから座で上演してほしい落語種の芝居など、中身の濃い対談でした。六月にはわざわざ相模原まで「髪結新三」を観に来てくれて、うちでしかやらねえ大詰の居酒屋が馬鹿に良かったってんで、褒めてくれました。その居酒屋の亭主やってたあっしとしちゃあ、嬉しくってねえ。一緒に遅くまで呑んじまいました。

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左から、あっし・師匠・女房・家主
 
  先代正蔵師匠最後の内弟子、正雀師匠ならではのいい話。
  長屋の付き合いの原則は、正蔵師匠いわく、決してよその家の中に上がらねえこと、すなわちプライバシーを犯さないこと。
  黒門町の文楽師匠オハコの「鰻の幇間」も、ご自分では志ん生師匠の野だいこぶりにはかなわねえてんで、黒門町、一日寄席を休んで、「鰻の幇間」やっておくれよ、て志ん生師匠に替わりを頼んで、ご自分は客席の一番後ろでマスクして聞いた、てぇんです。名人は名人を知る、いい話じゃございませんか。
  正蔵師匠オハコの「首提灯」。侍が町人に「無礼者」ってんで、侍が町人の首を斬る。で、その侍があまりの早業なんで、当人首を斬られたことに気付かず、落ちかかる首を両手で元に戻そうとする、それを正蔵師匠は、稽古の時は無言でやって、高座へ上がると、その時「フッ」と息を入れる。お弟子の正雀師匠はそれを見逃さなかった。稽古ってえのはそういうもんです。急所は見て覚える。それじゃあねえと、ほんとうにゃあ身につかねえ。
  こんだの脚本がそんなにいいのに、こんな芝居かい?って言われねえように、頑張らなくっちゃねえ。


  そやけど、今は「お登勢」の舞台が大事。下田の千穐楽まで、気張って勤めま。残る例会でお世話になる皆様、よろしゅうおたの申します。
【江戸に大阪、生国不詳。ええ加減な 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記18

矢之輔旅日記18

新婚旅行は、お前先

  わてらの新婚旅行は、静岡の南、270度海の、御前崎やった。今から21年前、わての誕生日に東京で式挙げて、翌日わては大阪公演の仕込みっちゅうのんで、御前崎のホテルに泊まり、翌朝静岡駅でわては下り、新妻は上りの泣き別れ、もう一遍二人で行ってみよか、と思うてましたが、昨日の菊川で出合った、元ヤンキーのアンちゃんに聞くと、あすこはもう更地やて。
 ところで去年の誕生日は、浜松の「三人吉三巴白浪」例会最終日で、会員さんと出演者全員との交流会。自己紹介の最後はわて、挨拶しようとした瞬間、場内の明かりが消えて、ハッピーバースデーの歌声と共にご入場なさったんが、このケーキ。

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 浜松の皆さんのお心遣いに感謝して、この写真、いまだに大事に携帯に入ってます。ちなみに、今年のわての誕生日は、いつもと違うて、今年は浜松の例会最終日、交流会のある、9月30日だす(そんなアホな)。
【いつまでも新婚気分でいたいと、勝手に思ってるだけの 矢之輔 記】

『お登勢』旅日記17

矢之輔旅日記17

も一つおまけに、チョー新人

  前回は、役者の最若手をご紹介しました。こたびは演出部の超新人、その名も、趙(チョウ)郁(カオリ)さん。幕開き早々、わてが早速つまみ食いする、蛸。設定では明石の蛸をわざわざ淡路島南部の洲本へ取り寄せて、生のまま塩でさっと洗い、ぬめりを取って刺身にした絶品、のつもりで食べてます。ほなけんど、実はカマボコの薄切り。これを彼女が毎回用意してくれまんのや、言うたら、加納家の、影のお登勢。
  初日からだんだん薄くなったので、口に残らないよう配慮してくれはったんやな、と思い、大丈夫やからもっと厚う切ってや、とお願いしました。つまむといい厚みで、口に入れるとリアルに残る、ちょうどの「蛸の刺身」になりました。
  今回初旅、どないやねん、感想は。
  「初めて旅に正式に参加しています。演出部の趙です。今回、消え物と言って舞台上で本当に食べる物の用意を担当させて頂いています。毎日スーパー探し。地元の散策に明け暮れています。
  初旅は、まだまだ戸惑う事ばかりです。疲れながらも見知らぬ街を歩くと自然と少し癒されます。これが旅の良さなのでしょうか。
  最後まで身体を壊さぬよう、しっかり頑張りたいと思います。」

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修理中の趙さん、何を直してんのやろ、企業秘密やな。

  もちろん、仕事は蛸の刺身だけやおまへん。いろいろこまごまやって、疲れるやろと思います。頑張ってや、期待してまっせ。座の裏方も、おいおい登場してもらお、と思うてます。陰の力、わてらが気持ちよう芝居ができるのは、彼女ら、彼らのお蔭だす。
来月の「人情一夕噺」の大詰は鰻屋。「鰻かあ、顔も忘れちゃった」という、三年ぶりに再会した子供に食べさせる鰻も、もちろん本物、しかも国産で、と注文してあります。
【食べる話に、異常な執着を示す 矢之輔 記】
 

Appendix

劇団前進座

怒る富士

2008年5月国立大劇場
怒る富士

★2008年
5月11日〜24日
■三宅坂国立劇場大劇場
■お問合せ
前進座東京営業所
TEL. 0422-49-2811
(10:00〜18:00 / 日・祝を除く)
★公演案内へ

前進座青少年劇場 

サチとキチと青いサンタと

★2008年
■8月2日・3日
吉祥寺 前進座劇場
■8月8日
喜多方発21世紀シアター 参加
■お申込み・お問合せ
前進座全国公演事務所
TEL. 0422-49-2633
(10:00〜18:00/日・祝を除く)

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前進座公演だより

劇団前進座の日々、公演だよりです

Author:前進座公演だより
公演中の班からは「稽古場だより」「公演だより」、お芝居の営業に全国へ行く俳優からは「全国飛びある記」東京の劇団事務所からは「在京班の日々」。前進座をお楽しみください!!

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