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『俊寛』『一夕噺』だよ

            微笑む俊寛

 終わらないのかとさえ思われた猛暑も月が替わるとともに秋風が立ち、稽古場への往復は、肺腑の中まで黄金色に染まりそうな金木犀の咲く道を。
 初日までカウントダウンに入り、稽古場は急ピッチで進行中です。
 
 『俊寛』は、1960年の第一次訪中公演に、『勧進帳』『佐倉義民伝』『鳴神』とともに選ばれた前進座歌舞伎の典型。伝統をどう学び考え、いかに現代に生きるものにし、次の世代にどう受継ぐか、その試行錯誤の歴史とぴったり重なっています。
       仮飾りの前進座舞台


 俊寛20年目を勤める梅之助は、俊寛の前に、舟子、諸士から、成経、丹左衛門、瀬尾と演じて、「やってないのは千鳥と康頼だけ」。再演ごとに工夫が積み重なってきた『俊寛』のこと、こうやったこともある、このやり方もあるが、今回どうすべきか、という討論から稽古は始まりました。

 『平家女護嶋』の二段目一幕がすなわち『俊寛』。これだけではわかりにくい俊寛と妻・東屋(あずまや)のこと、清盛と俊寛とのこと、瀬尾と丹左衛門の関係などを、初段の台詞から拾って座の劇作演出家・平田兼三が補綴(ほてい)して出発したのが、前進座『俊寛』。

 初期の上演の中で、「一人取り残される幕切れが悲しくやりきれない」と多くのお客様方からのご意見があり、源氏の旗揚げに至る『女護嶋』全五段をひっくり返して読むうちに、悲しみと同時に、時代の変化への確信と千鳥たちを都へ帰す喜びがあると思えて来、泣いていく中から笑ってゆくようにした。それがお客様に喜ばれ、志賀直哉先生にも褒められた、と翫右衛門の手記にはあります。

 51年前の旧・俳優座劇場公演では、搬入口から岩が入りきらなかったとか。「昔の歌舞伎はこう(いう空間)じゃないか」「こういうところでやるのも非常に大きな勉強になるんじゃないか」と思い「少し写実的な形で」演じたことが、その年のテアトロン賞受賞に繋がりました。
国立大劇場、京都南座、と大劇場での上演が続いた『俊寛』20年ぶりの“中劇場”。
       本番用の孤島が完成しました

 
 真実感を求めつつ皆みな 汗を流しています。


                  松涛喜八郎☆記

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