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初日から“全力疾走”-


啓介


5月9日、国立劇場公演『番町皿屋敷』『文七元結』初日の幕があがりました。
開演前には出演者、スタッフが全員集合しての【初日の集い】。梅之助さんの手締めに一段と緊張感が高まります。
11時。いよいよ『番町皿屋敷』開幕。私は芳三郎さん演じる青山播磨に仕える奴の権六。

「奴、参れ!」

青山播磨とお菊の究極の恋は激しく切ない情感をともなって悲劇をむかえます。お菊を手討ちにし、一生の恋を失った播磨はおのれの死に場所を求めるように町奴との喧嘩に供の奴を引き連れて、駆け出します。
この花道の走りが何とも凄い。何しろ全力疾走なのですから。
私も長年役者をしておりますので花道への引っ込みは何度か体験しておりますが、七三で台詞を言うでもなく、ツケに合わせて徐々に走り出すでもなく、最初から脇目もふらず全速力で花道を疾走するのは初めてのことです。これが岡本綺堂さんの新歌舞伎なのですね。先頭の芳三郎さんに遅れずについていく私はまるで100メートルの短距離選手になったようです。
しかも私の疾走は鳥屋口に入ってからも続きます。全力で奈落を駆け抜け、楽屋に向かって一直線…この全速力にはわけがあります。
柳生

私は休憩後に開演する『文七元結』の幕開きに、佐野槌の若い者、藤助役で登場するからです。そうです。私は『番町皿屋敷』の最後と『文七元結』の最初に出演する最も忙しい(?)役者なのです。

「もし長兵衛さん、なかなか結構なお住まいで」

長屋の長兵衛宅を訪問した藤助はいかにも貧しい住まいを見回してこう言いますが、これはまんざらお愛想ではありません。ここは貧しくとも誇りをもってたくましく生きる人間らしい雰囲気のある家だからです。
実際ここまで来るのに全力疾走して大緊張してこの家に入ってきた私ですが、長兵衛役の矢之輔さんやお兼役の國太郎さんのお顔を見ると何だかホッとしました。心が落ち着くのです。そしてこの夫婦を見守る観客席から漂う温かい空気に癒されたのです。

「長兵衛さん、お前さん、怒っちゃいけませんよ」

怒りっぽくて気位も高い長兵衛さんを気遣い、尊敬の念を込めて言う藤助のこの台詞が大好きです。
『文七元結』は言わずと知れた前進座の財産演目。そしてこの藤助さんは幕開きの芝居の流れを決定づけるとても大事な役。歴代そうそうたる先輩方が演じられています。いつかは挑戦したいと思っていた役の一つでした。
長兵衛夫婦や客席の皆さんに助けられ、どうにかこうにか夢中で初日を駆け抜けましたが、まだまだ課題ばかりが山積みの困った藤助さんです。どうか“怒らないで”おしまいまで温かく見守っていただければこの上もない喜びです。

走る
千穐楽まで“全力疾走”でまいります。

柳生啓介
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