Entries
『解脱衣楓累』だより
古池や 歌舞伎飛び込む 水の音
『解脱衣楓累』、吉祥寺での幕を開けます。
歌舞伎の幕といえば、三色の引き幕―定式幕ですが、
この引き幕使用を許されたのは、幕府公許の江戸三座だけ。
ほかは緞帳を使いました。
その昔、初世猿若勘三郎が、
幕府の御座船を木遣り音頭で見事に導いた功により
将軍家光から、その安宅丸の帆を拝領、
中村座の引き幕に仕立てたのが
定式幕の始まりといわれています。
もちろん公許の三座ー中村座・森田座・市村座ー
と言えども、保護されていたわけじゃあありません。

≪老中水野忠邦≫
大南北が冥土に旅立った翌年改元されて、時代は天保。
老中・水野忠邦は、芝居禁止令を決定。
ここに立ちふさがったのが、我らが遠山の金さん。
桜吹雪にもろ肌脱いで
(は いなかったと思いますが)、
芝居の必要性を、立て板に水の如く述べて
論破した(んでしょう、見たわけじゃないけど)。
江戸三座は命を取り留めて、
沼地を埋め立てた浅草猿若町に移転。
そこで街角には表題の落首(らくしゅ)。
落首ってのは、庶民の時事批評。今で言えば
ザ・ニュースペーパーのコントみたいなもんです。
全国の公共会館を含めて、現在見られる定式幕の殆どが、
森田座流の萌黄・柿・黒(上手から)の並び。
近年また見られるようになった
中村座の配色は、黒・柿・白。
一方、市村座流の黒・柿・萌黄。
一つに見える定式幕にも江戸三座それぞれの色がありました。
市村座は、77年前、前進座が旗揚げした小屋。
翌年正月からは五ヶ月連続で提携公演が軌道に乗っていたが、
さて明日が創立一周年という日、漏電から出火。
楽屋風呂から汲んだ湯で火を消そうとしたら
慌てた声が叫んだ。
「馬鹿、お湯を掛けたら火はなお燃える」。
二日前に後援会から贈られたばかりの座旗を、
藤川八蔵が何とか救い出したが、
私物を持ち出す暇もなく、三十分足らずで全焼。
江戸以来の名を伝える芝居小屋の最期だった。
196年前、『解脱衣楓累』が上演される筈だったのも、
この市村座。
初演から203回目、新生『累』の9回目が、
ホーム・タウン吉祥寺での返り初日。
前進座劇場の定式幕は、柝の音が響くのを待つばかりです。
喜八郎☆記
写真は、上:『あばれ八州御用旅』水野忠邦役
中村梅之助
(『月刊前進座』1990.4月号より)
下:『遠山の金さん捕物帳』遠山金四郎景元役
中村梅之助
(『写真集・中村梅之助』より)
『解脱衣楓累』、吉祥寺での幕を開けます。
歌舞伎の幕といえば、三色の引き幕―定式幕ですが、
この引き幕使用を許されたのは、幕府公許の江戸三座だけ。
ほかは緞帳を使いました。
その昔、初世猿若勘三郎が、
幕府の御座船を木遣り音頭で見事に導いた功により
将軍家光から、その安宅丸の帆を拝領、
中村座の引き幕に仕立てたのが
定式幕の始まりといわれています。
もちろん公許の三座ー中村座・森田座・市村座ー
と言えども、保護されていたわけじゃあありません。

≪老中水野忠邦≫
大南北が冥土に旅立った翌年改元されて、時代は天保。
老中・水野忠邦は、芝居禁止令を決定。
ここに立ちふさがったのが、我らが遠山の金さん。
桜吹雪にもろ肌脱いで

(は いなかったと思いますが)、
芝居の必要性を、立て板に水の如く述べて
論破した(んでしょう、見たわけじゃないけど)。
江戸三座は命を取り留めて、
沼地を埋め立てた浅草猿若町に移転。
そこで街角には表題の落首(らくしゅ)。
落首ってのは、庶民の時事批評。今で言えば
ザ・ニュースペーパーのコントみたいなもんです。
全国の公共会館を含めて、現在見られる定式幕の殆どが、
森田座流の萌黄・柿・黒(上手から)の並び。
近年また見られるようになった
中村座の配色は、黒・柿・白。
一方、市村座流の黒・柿・萌黄。
一つに見える定式幕にも江戸三座それぞれの色がありました。
市村座は、77年前、前進座が旗揚げした小屋。
翌年正月からは五ヶ月連続で提携公演が軌道に乗っていたが、
さて明日が創立一周年という日、漏電から出火。
楽屋風呂から汲んだ湯で火を消そうとしたら
慌てた声が叫んだ。
「馬鹿、お湯を掛けたら火はなお燃える」。
二日前に後援会から贈られたばかりの座旗を、
藤川八蔵が何とか救い出したが、
私物を持ち出す暇もなく、三十分足らずで全焼。
江戸以来の名を伝える芝居小屋の最期だった。
196年前、『解脱衣楓累』が上演される筈だったのも、
この市村座。
初演から203回目、新生『累』の9回目が、
ホーム・タウン吉祥寺での返り初日。
前進座劇場の定式幕は、柝の音が響くのを待つばかりです。
喜八郎☆記
写真は、上:『あばれ八州御用旅』水野忠邦役
中村梅之助
(『月刊前進座』1990.4月号より)
下:『遠山の金さん捕物帳』遠山金四郎景元役
中村梅之助
(『写真集・中村梅之助』より)
- 関連記事
- カテゴリ : 解脱衣楓累
- 2008-10-10
- コメント : 0
- トラックバック : -