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五月国立大劇場公演だより

粋な役人

モウコノウマ

 前進座が初めて映画出演することになった時、
最初に名の挙がったのが、稲垣浩監督。
 だが、別の映画を抱えていた為、
第一作『段七しぐれ』ではシナリオだけを担当した。

 やっと前進座映画監督が実現したのは、第五作
『股旅千一夜』。
 この映画も今は紛失したままなのだが、
大詰に馬競べの場面がある。
時代劇スターは馬に乗れないのが普通。

 当時の大スター阪東妻三郎も大河内伝次郎も、
乗馬場面はスタント・マンを使ってフィルムの繋ぎに苦心した。

 『股旅―』でも、吹き替えが用意されたが、馬のご機嫌斜めで言うことを聞かない。
 「私にやらせて下さい」と名乗り出たのは、
本役の中村翫右衛門。見事に荒馬を乗りこなした。
 少年時代は馬で歌舞伎座に通ったという筋金入りだった。

 映画は好評、
「上手い。吹き替えが全然わからない」
クサったのは、監督と翫右衛門、
と監督自身のエッセーにある。

       
         ☆

 江戸無血開城を描く『江戸最後の日』を監督が撮ったのは
日米開戦の年。情報局国民映画としてだった。

 同時期、
東宝は猿之助、大河内で『川中島合戦』(衣笠貞之介監督)を
新興キネマは市川右太衛門で『大村益次郎』(森一生監督)を
松竹は前進座で真山青果の
『元禄忠臣蔵』(溝口健二監督)を
何れも情報局国民映画として製作した。
             薩摩屋敷に使われた階段

 様々な制限の中だったが、
悪条件を跳ね返してこそ面白い映画が生まれるという稲垣監督は、
阪妻の勝海舟に賭けた。
                 青蓮院

 薩摩屋敷は、親鸞聖人得度の地 青蓮院前で撮影したが、
江戸城の大門は、二条城をおいて他にない。
         
 撮影隊が向かうと、撮影は構わないが、大門を開けて
中に入るのは無理だという。
 観光客が気軽に入れる二条城は、戦後のこと。
当時は、しかるべき位階勲等を持ったものが手続きをとって
認められ礼服着用でないとは入れない所。

 正式の手続きを踏んで認められたとしても
二十日は掛かり封切に間に合わない。
 食下がる監督に、上役に相談の為と役人が奥に去った。
暫し待っていた監督、ハッとして叫んだ、
「カメラを回せ」。
      

 すっかり撮影が済んだ時、
役人が断りの返事を持って帰ってきた。
 上役は見物の群衆の中から
一部始終を見守っていたのだった。


           喜八郎☆記
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