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『お登勢』旅日記9

矢之輔旅日記9

よう判らへん

 ほんまによう判らへん事件が多すぎまんな。辞めた首相の気持ちもやし、親戚を次々殺して英雄気取りな人、いきなり知らん人を包丁で刺す人、こんな時代が何で到来したのか、よう判らん。
 でも一番判らんのが、この徳島藩の浅黄足袋と白足袋。わては徳島藩の藩士やから、生まれた時から白い足袋履いてまんねん。いや、生まれたときはもちろん裸足やったけど、それから後、親に履かされたのは白の足袋。
 ところが稲田っちゅう家老の家臣は、ずう〜と足袋は浅黄。それは身分が、家老の家臣、つまり「又家来」やから。そんなん当たり前やんか、ねえ。わてらは殿さんの家来、あいつらは殿さんの家来の家来、身分が違えば足袋の色も違う、当然ちゃいますか?
 って、この感覚があかんかったんやね、稲田の家臣にとっては。藩士は稲田の家臣を陪臣とか、又家来とか言うていじめよる。稲田の家臣は反発して、向こうが佐幕ならこっちは勤皇、っちゅうなもんで、ことごとく対立した挙句が、稲田騒動となって稲田家臣が徳島藩士に襲われてしまう。そこんところが、この「お登勢」で一番の肝心要、時代背景。
 でも皆様、そんなん判らんでもええんじゃ、と言うて逞し〜く生きるのが、主人公のお登勢。これから例会を迎える静岡の鑑賞会の皆様、是非ご期待下さい。


 ちなみに、正月前進座劇場公演の「あなまどい(穴惑い)」の主人公の父が、瀕死の女房を抱えた足軽に無理に土下座させたために、女房を死なせてしまったその足軽に斬られ、父の仇討ちに旅立って30有余年、本望を達してやっと新婚の妻と再会、というお話で、江戸時代はおましたんや、身分の違いから来る悲劇が仰山。主人公は嵐圭史、その妻が、お登勢の浜名実貴、その甥で、跡目を継ぐのんが、睦太郎の嵐広也。お正月も前進座劇場をよろしゅう。
 という訳で、直木賞作家・乙川優三郎氏原作の作品を脚色した、座の若手脚本家・金子義広に大いに期待して、まずこんにちは、これぎり。
【正月は前進座劇場ではなく、京都公演に出演する 矢之輔 記】

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