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『切られお富』だより

安蔵の『切られお富』の見どころ

矢之輔


見どころ、その1
 まず序幕は、お富と与三郎が再会し、
そこに突然の雷鳴、二人は雨宿りと称して辻堂の中へ。
しばらくして出てきた二人は、台本のト書きに
「ト、お富与三郎、自堕落ななりにて出て、帯など締め直すこなし」
とあって、中で二人が何をしていたかがよく分かる演出です。
まさかゲームでもしていた訳じゃありません。

見どころ、その2
 女中とお供の安蔵を伴い、
お富は旦那の赤間のところへ帰ってきます。
そこへ来たみる杭の松は、安蔵とグル。
お富の不倫をタネに赤間から強請り取ろうとしますが、
この赤間は盗賊の頭、みる杭を斬ったその刀でお富を斬りさいなみますが、
そこが歌舞伎、生々しくなく、グロテスクでなく、
あくまでも絵心を失わずに、美しく、
総身にかけて75針の傷をつけ、とうとうお富は気を失います。
それを死んだと思った赤間は、葛籠に入れて、安蔵に運ばせます。

見どころ、その3
 お富を入れた葛籠を背負った安蔵は、横浪の川岸へ。
夜のことで辺りは真っ暗やみ、江戸時代のことです、
鼻先にいても相手が見えない真の闇、
そこへお富の彼氏の与三郎、別の道をお富の父親・按摩の丈賀がやってきて、
三人の「だんまり」、
歌舞伎用語で「暗闇の立ち回り=暗闘」です。
しゃべったら相手に居場所を知られてしまうので、
みんな黙って右往左往、それで「だんまり」。
おそらく「だんまりを決め込む」の語源でしょう。

見どころ、その4
 薩埵峠で立て場茶屋という、旅人や駕籠屋の休憩所みたいにしている、
そこへ偶然来かかる与三郎、中から出てきたのは傷だらけのお富。
以前のおとなしいおかみさん風のお富と違い、
男のような口をきき、それこそ悪質運転手のような雲助相手の商売をして、
彼らに姐御と言われる女になったお富も、
与三郎の前では消え入りそうな風情。
 その様子を陰からみている亭主の安蔵。
知らん顔でうちへ帰れば、お富はまたぞんざいな口をきき、
安蔵が抱きしめようとするとそれを突き放して男のように
「まだ宵の口だあな」。

見どころ、その5
 ここが一番の見どころ。
「今じゃあ真面目な女郎屋だが」と、
女郎屋が何で真面目かは別として、そこへ乗り込んだお富と安蔵、
旦那の赤間は元は盗賊、それを知らずに女房に納まっている女が店の若い者を使って追い出そうとすると、
お富「これさ静かにおしよ、内気だからおびえらあな」
と機先を制して、
「お前は近頃のおかみさんだから、旦那の元の商売をご存じないが、
今はまじめな女郎屋でも、昔を言やあ、ただ取ることもありましたっけねえ」
と、じわじわ強請りにかかり、
「そんならうぬらは強請りにきたのか」と赤間が言えば、
「そりゃああなたが仰らなくとも、いづれも様がご存じだあね」
と、半纏を脱ぎながら言うセリフは、一番の聞かせどころ。
先代国太郎が、悪婆物の得意な田圃の太夫と言われた4代目沢村源之助の名調子をそっくり伝えて、
さらに磨きをかけた名台詞。
店の若い者役でずっと出ていた私なぞは、
毎日生で聞いて、ぞくぞくしていました。

見どころ、その6
 あとは大詰の立ち回り。
強請り取った二百両を独り占めして大阪へ高跳びしようとする安蔵の、
背後から出刃包丁で突き刺すお富。
番傘で応戦し、髪もザンバラになって、
頬には血糊、泥の中の人殺しだが、
そこは音楽と動きを上手く組み合わせて、
歌舞伎独特の「殺し場」をご堪能ください。
 取り返した二百両は、偶然通りかかった与三郎の手に。
お富は与三郎を先に行かせ、自分は亭主殺しのつぐないに自ら命を断とうとします。
そこへバラバラっと出てくる若い衆。
歌舞伎にはよくあるパターンですが、
國太郎の屋号「やまざき屋」と書かれた傘を使った派手な立ち回り、
最後にバックの黒幕を振り落として、客席全体の提灯や明かりに火が灯り
、一瞬にして味合う爽快感、理屈抜きにお楽しみください。


記・矢之輔
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